大会

第59回神戸大会 プログラム

■会場のご案内

神戸国際会議場 4階5階 神戸市中央区港島中町6-9-1 アクセスはこちら
KCC 神戸コンベンションセンター内 ポートライナー「市民広場」駅 直結

日本臨床心理学会 第59回大会 プログラム

会場 テーマ 話題提供者(ゲスト)
1 504+505
児童福祉施設で暴力なしで暮らすための試み
――安全委員会方式の導入から
  • 小笠原 寛
  • 本多 悠一郎
(岡崎平和学園 岡崎市)
2 404
こころの病気と共に地域で暮らす
――ピアサポーターの活動をとおして
  • 岡田 智子
  • 濱崎成人 梅花薫 辻圭一郎
(ICCC コミュニティケアセンター 伊丹市)
3 405
関係の世界へ
――危機に瀕する私たちが生きのびる方法
  • 鮫島 輝美
(関西医科大学・理論看護学/集団心理学)
4 406
自主シンポジウム(応募者枠)
5 504+505 司会
  • 羽下 大信(大会長)
▼クロストーク・セッション▼

ケアあるいはサポート――
アマチュアリズムと専門性から
  • 松嶋 健
(広島大学・文化人類学/医療人類学)
  • 桜井 智恵子
(関西学院大学・教育学/社会思想史)
会場 テーマ 話題提供者(ゲスト)
6 504+505 パートナーシップと家族の多様性を考える
――セクシュアル・マイノリティの視点から
  • 司会:奥田 由子
  • 梨谷 美帆
(カウンセリング・ラボ SORA 大阪市)
  • 樋口 亜瑞佐
(愛知教育大学・臨床心理学)
7 404
精神科病院での人権侵害をなくすために
――尊厳が守られて、安心してかかれる精神保健を考える
  • 司会:にら こと 韮沢 明
  • 有我 譲慶
  • 当事者 たにぐちまゆ
(大阪精神医療人権センター)
  • 高橋 亮也
(兵庫県精神医療人権センター)
8 405
対話反想法とグループ・リフレクティングで
PTMFを実践的に学ぶ
  • 滝野 功久(いさく)
(イサクプレイワーク主宰)
9 406
▼個別発表▼
インクルーシブ教育の現在
  • 田中 佑弥
(山口短期大学・子ども支援研究)
406
▼個別発表▼
精神科<造形教室>で表現すること
――生きる意欲をもたらすプロセス
  • 藤澤 三佳
(京都芸術大学・社会人間学)
10 504+505 不登校のこどもがつくる・こどもとつくる
  • 司会:矢野 良晃(For Life)
  • 中林 和子 ほか
(フリースクールForLife 神戸市)
11 404
▼自主シンポジウム▼
病棟コミュニティの文化を変える「対話」の仕組み
――緩和ケア病棟を多方向支援的に変容させたナラティヴ・アプローチ
  • 田代 順
(ナラティヴ・アプローチ研究室/対話ラボ)
  • 大西 郁子
(東京成徳大学大学院博士課程/
 東京都スクールカウンセラー)
12 405
▼個別発表▼
これからの臨床心理学
――心理職の国家資格化の経緯から考える
  • 岩田 光宏
(大阪経済大学・臨床心理学)
  • 宮脇 稔
(元大阪人間科学大学・臨床心理学)
13 406
ヒアリング・ヴォイシズ
――「幻聴」という精神医学用語から
「声が聞こえる」という体験の言葉へ
  • 佐藤 和喜雄
  • ほか
(NPO福祉会菩提樹)
14 504+505 学会定期総会
会場 テーマ 話題提供者(ゲスト)
15 オンライン
これまでの臨床心理学を脱いだら、何が見えるか
――精神科診断に代わるフレームワーク、
PTMFをめぐって その解説と議論
  • 石原 孝二
(東京大学・哲学)

★大会関連企画★

会場 テーマ 話題提供者(ゲスト)
16 西宮市大学交流センター
(ACTA西宮東館6階)
もっと別な(オールタナティヴな)見方やり方が立ち現れる
ほぐしばい(フォーラムシアター)を学ぶ
  • 滝野 功久(いさく)
(イサクプレイワーク主宰)

17日夜に懇親・交流会を開催予定にしています。大会に参加申し込みの方に、後日詳細をお知らせします。

第59回神戸大会 個別発表・自主シンポジウム等の受付

以下の要領に従って、(必着)までに申し込んでください。
発表趣旨・要約をA4一枚程度にまとめ、メールで、神戸大会運営局へ送ってください。

  • 氏名
  • 所属
  • 連絡先(e-mail address 及び携帯電話番号)
  • タイトルと発表趣旨と要旨(できるだけ詳しく。漠然としたものは受理できません)
  • 今回の個別発表と自主シンポジウムは、会場にて発表できます(オンラインはなし)。発表の方法や条件などに関しては、個別に相談させていただきます。受理された個別発表と自主シンポジウムについては、表題をネット上の公式サイトに掲載します。
  • 発表あるいは開催の内容に関しては、次のことを了解した上で、申し込んでください。
    1. 守秘義務や名誉棄損などに関して問題がないように発表者側で十分注意したうえで、作成してください。
    2. 個別発表に限りませんが、ネットでのセキュリティに関して、主催者としてできる限りの配慮をします。しかし、情報の拡散に関しては、防ぎようがないことがありますので、主催者に明らかなミスがある場合を除いて、責任は負えません。
■■個別発表・自主シンポジウム等の受付先
kobetaikai59@gmail.com 神戸大会 運営局
※大会に関しての問い合わせもこのメールアドレスまで
■■会場の案内
神戸国際会議場 4階5階 神戸市中央区港島中町6-9-1 アクセスはこちら
KCC 神戸コンベンションセンター内 ポートライナー「市民広場」駅 直結

第58回大会 プログラムとお申し込みページURL(こくちーずプロにて)

プログラムと申し込み先URL(こくちーずプロにて)をご案内します。
参加される方は、こくちーずプロにてそれぞれお申し込みください。

■■■ プログラム ■■■

▼11/4(金)13:00~16:30 大会メインセッション①(登壇者:松嶋 健 さん)
文化人類学者 松嶋健と語る「臨床心理」の外に出る
―― 生きることの共同性に向けて イタリアの精神医療改革に学ぶ
https://www.kokuchpro.com/event/b7bb41e975ad219a346d6c0749c3ab0c/
▼11/4(金)18:30~20:00 セッション①(登壇者:鮫島 輝美さん)
社会構成主義はいかに未来を拓くか
https://www.kokuchpro.com/event/f4fdfc5bda574dc7c8e331f94b99d508/
▼11/5(土)10:00~12:00 セッション②(登壇者:頼尊 恒信 さん)
「共に生きることを考える」 ~相模原市事件を契機として~ 優生思想を語る
https://www.kokuchpro.com/event/7e690a6028422927c721af146281964c/
▼11/5(土)14:00~17:00 大会メインセッション②(登壇者 :東畑 開人 さん)
東畑開人と語り合う 「臨床心理学をわら(笑・嗤?)う」
https://www.kokuchpro.com/event/a9a081af08e98dc2cfa4dfc811c7f1a8/
▼11/6(日)13:30~16:00 セッション③(登壇者:佐藤 和喜雄 さん他)
「幻聴」ではなくヒアリング・ヴォイシイズ――声と共に生きる豊かな人生を!
https://www.kokuchpro.com/event/11da186840018a24450d7f66d21b4d60/
▼11/13(日)13:30~18:30 ほぐしばい(登壇者:滝野 功久(いさく)さん)
ほぐしばい(フォーラムシアター)の窓とドア
門前ではなく広場をにぎわすために「知らないから」こそできること
https://www.kokuchpro.com/event/12c110732b89ee1e7cc70c9ec4a64053/

■■■ お申込み方法 ■■■

最初に申し込まれる際に、参加費の支払いをしていただき、2セッション目からは、参加費支払い済を選択してお申し込み下さい。 (早割は、10月27日(木)23時59分までの申し込み+お支払いに適用します。)

特別枠チケットをご希望の方は、窓口まで直接お問い合わせください。その他のお問い合わせも、原則、メールでのお問い合わせをお願いします。

問い合わせ先: openspace.nrs@gmail.com

日本臨床心理学会 第58回大会 ▼日程表

この「臨床心理学」を脱ぐ!
  --そのマスクを外したら、どうなるか。
           世界は?自分は?関係は?

「臨床」という言葉を私たちは大切にしています。「臨床の知」という言葉が今も日本では相当な力をもっている訳や意味を考えることは別にするとして、 「臨床心理学会」の名を冠りとして被っている学会としては、「臨床」を大事にせざるを得ません。 しかし、それは「臨床心理」と言う言葉にしがみつくことではありません。 むしろ、現在使われている「臨床心理学」が当然視していることを徹底的に見直してみようと言うことです。 既成のイメージで自らを縛りつけて不自由になっていないか、ということです。

「脱ぐ!」この言葉には、まずは、人に見せつけたり身を守ったりの衣装を脱ぎ捨て て、裸になって、素(す)になって、自らを見つめ直すということです。脱いだら何が現れるか、と。しかし、言葉を使う限り裸になれるでしょうか? そもそも何が素(す)と言えるのでしょうか?

裸にして診断するという発想から離れて、着ているものが何かを知るという作業を始めることの方がベターかもしれません。 また、全く別の衣装をまとう、あるいは、衣装や飾りの一部を剥がして全体を変えてしまったらどうなるか? こうした軽々とした冒険と試みをすることもできます。それは、この衣装、この専門用語、あるいはこのブランドに見事に組み込まれていて、 当然視されるために却って見えなくなってしまっている仕組みや仕掛けを、あらわにしようということでもあります。

いずれにせよ、そうした観察と模索や試行のためには、この「臨床心理学」から一度外に出てしまうことが絶対に必要です。 そういう意味を込めて「脱ごう!」と言うわけです。

臨床心理学と繋がったり重なったりしている「学」は実にたくさんありますが、今回はその一つである人類学の力を借りたいと思います。 研究方法やアプローチには非常に近いものがあるのですが、これまで私たちの臨床心理学は、基本的に人類学を無視して来ました。 その理由を考えるのはさておいて、人類学――文化人類学と言うべきでしょうが――この扉をまずは開けてみましょう。 現に生きている集団に参与しながら異邦人の視点を大切にする文化人類学からの視点は、私たちに特別な力を与えてくれます。 それは、専門家の常識を揺るがし、専門家依存体制には疑問符を投げかけ、専門家との付き合い方において、全く別の可能性を見せてくれると思います。

遥か以前から、人はいろいろな場面で、不安や恐怖に怯え、悲しみに打ちひしがれ、葛藤にさいなまれ、 屈辱や苦難はもちろん絶望も限りなく体験して来たでしょう。 そうした時にどうしたか、何がなされて来たか、時代を超え、地域や社会を超えて、人間の長い歴史のなかで行われたであろうことを考えながら、 現在「臨床心理(学)」と呼ばれていること、その営み(あるいはそんな言葉で括れない「こころ」の動き)全体を見直してみたいと思います。

それには、言葉が生まれる前からのこと、あるいは言葉が誕生の前後のことも一緒に考えて見る必要があるかもしれません。 それは現在の私たちには手が負えないことになるかもしれません。しかし、大切なことは、別の衣装を早く見つけることではありません。 ずっとまとっていて肌になじんでしまっていることに対して、それは「脱ぐこともできる」という考えがもてるだけでも相当に意味のあることではないか、 ということです。

更には、衣装というより、身に着けたものが張り付き、あるいは肌に浸み込んでいて、もはや脱げなくなってしまっていることだってあります。 過剰適応です。役割や言葉がその場にあまりにもピッタリしてしまって、なんの違和感もないことは、その場にうまく包みこまれている多くの人には、 それなりの穏和で平和な時と所を確実に与えてくれます。しかし、それは、背後に隠されている大変な犠牲がそれを可能にしているだけのことも多いのです。 そして、私たちが棲む世の中は、外から見ると、実は????に満ち溢れています。

こうしたことに気づく、これだけでも大いに意義があると思っています。さらには、今回の大会で出会い体験することが、 そこでのイベントだけに終わらずに、日常のなかで、別の視方や生き方を探り試すきっかけになるようであれば、これほど嬉しいことはありません。

脱ぐものが、(烏)帽子か鎧か、あるいはマスクか、はたまたパンツなのか分かりませんが、その時の身軽さと肌の新しい感覚や世界の鮮さを 味わってみたいと思います。内なる世界と外の世界と、そしてその関係が、大きくあるいは微妙に動きます。それを「こころ」はどれほど、どのように、 喜べるか、楽しめるか?それが問題です。

★今回のメインゲスト★

東畑開人:心理臨床家で、心理的対人援助全体を人類学的観点からも見直し、臨床心理学を学ばんとする人達に、スキルだけではなく、その元まで探り考えるべきだと主張している。

松嶋 健:文化人類学、医療人類学が専門。精神病院をなくしたイタリアでのフィールドワークの成果は『プシコ ナウティカーイタリア精神医療の人類学』に結実している。近年は、「こころ」の問題を社会や自然のなかでどう捉えればよいのかについて研究している。

※大会のテーマはいいとして、このキャッチフレーズに関しては、大会準備のスタッフの中でいろいろな議論がありました。 もう少し別な表現がいいとか、ちょっと乗れないところがあったり、これを加えて欲しかったりと。 これの後に「キャッチフレーズの出来上がるまでの過程」を書いて、少しでも舞台裏をお見せします。 全体として、この大会にも多様な考えが背景にあり、どんな人にも、「どうぞ来てみてください!」と、 言えるような集まりにしたいと思っています。

日臨心 第58回大会実行委員会 代表・滝野功久(いさく)

第57回大会のスペシャルゲストのご紹介

● 斎 藤  環 氏

1961年岩手県生まれ。精神科医。筑波大学医学研究科博士課程修了。 爽風会佐々木病院等を経て筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。 専門は、思春期・青年期の精神病理学、「引きこもり」の治療・支援並びに啓もう活動。

著書に、「社会的ひきこもり」、「中高年ひきこもり」、「世界が土曜の夜の夢なら」、 「オープンダイアローグとは何か」、「心を病んだらいけないの」ほか多数

● 松 本 俊 彦 氏

1967年神奈川県生まれ。佐賀医科大学医学部 卒業。 横浜市立大学医学部大学医学部精神科などを経て、 現在、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長、 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 薬物依存センター センター長。

著書に、「自分を傷つけずにはいられない」、「よくわかるSMARPP:あなたにもできる薬物依存者支援」、 「薬物依存症」、「誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論」ほか多数

● 信 田 さよ子 氏

1946年岐阜県生まれ。公認心理師、臨床心理士。原宿カウンセリングセンター前所長。 お茶の水女子大学哲学科卒業、同大学大学院修士課程家政学研究科児童学専攻終了。 駒木野病院勤務を経て、1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。 専門は、アルコール依存症、DV、子どもの虐待をはじめアディクションに悩む人や家族のカウンセリングを行っている。

著書に、「母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き」、「カウンセリングに何ができるか」、「家族と国家は共謀する」他著書多数

● 渡 邊 洋次郎 氏

1975年、大阪府生まれ。介護福祉士。十代から鑑別所入所、少年院入院を繰り返す。 20歳からアルコール依存症等で精神科病院へ四八回入院。三〇歳からの刑務所服役後、自助グループへつながり、回復の道を歩み始める。 現在、依存症回復支援施設で職員として働きながら、啓蒙活動や海外の自助グループとの交流を行っている。

著書に、「下手くそやけどなんとか生きてるねん 薬物・依存症からのリカバリー」ほか

● 風 間 直 樹 氏

東洋経済 調査報道部長
1977年長野県生まれ。早稲田大学政経学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。 電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。14年8月から17年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。 復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、19年1月から調査報道部、同年10月より現職。2021年度日本医療ジャーナリスト協会賞受賞

著書に『雇用融解』(07年)、『融解連鎖』(10年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(13年)など。

● 国 重 浩 一 氏

1964年東京都墨田区生まれ。ニュージーランド、ワイカト大学カウンセリング大学院修了。 日本臨床心理士、ニュージーランド、カウンセラー協会員。2013年からニュージーランドに在住。 2019年にナラティブ実践協働研究センターの立ち上げに参加

著書に、「ナラティヴ・セラピーの会話術」、「ナラティヴ・セラピーのダイアログ」、「もう一度カウンセリング入門」ほか多数

横 山 克 貴 氏

1990年、神奈川県相模原市生まれ。東京大学大学院にて臨床心理学を学び、語りやナラティヴについての質的研究に取り組む。 その傍らでナラティヴ・セラピーと出会い、2018年ワイカト大学のカウンセラー養成コースに1年間留学してこれを学ぶ。 2019年に仲間と共に一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センターを立ち上げる。現在は、同法人にて、ナラティヴ・セラピーの実践や研究、 その普及に取り組んでいる。

著書に、『ナラティヴ・セラピーのダイアログ 他者と紡ぐ治療的会話、その〈言語〉を求めて』(共編著、北大路書房)

日本臨床心理学会 第57回大会 ▼日程表 ▼分科会一覧

臨床心理学の源流に遡りながら、
人類のこの新時代に
臨床心理(学)の営みを根底から見直し、
新しい動き方を試みる

わたしたちは今なんとも奇妙な時を、なんとも不確実な世界を、今までにない形で生きています。 戦争や革命の最中でもないのに、そして科学技術に対する信頼はかってないほど強固なものがあるのに、 すぐ先のことさえわかりません。*1

確かなことは、今(生物としての)ヒト、(心理社会的存在としての)人間、そして(人の集まりとしての)集団と組織が、 根底から問われているということです。そして、その問いを、流さずにしっかりと受け止めて行くと――独り静かに心の中でではなく、 人と人との間で言葉を交わしながら問い続けると――自分自身はもちろん自分が属する家族をはじめとする集団や組織には、 これまでとはかなり違った展開が始まるだろうということです。

今わたしたちが直面している未曾有の事態は、自然に対する人間のひどい関わり方がもたらしたものです。 自然を搾取しながら、ひたすら突き進んできた人間/個人中心主義と商品の生産/消費中心主義に色づけられた 「近・現代なるもの」が、ついに地球全体を覆い尽くすことを可能にした経済のグローバル化の帰結だ*2と 言い換えてもいいと思います。

新型コロナウイルスのパンデミックは、多分しばらくしたら(少なくとも一時的には)収束するでしょう。 しかし、もはやわたしたちの生き方は元のようには戻してはなりますまい。 また、元と同じようにはなれないでしょう。 同時にグローバル化の道はもはや引き返すことが出来ないほど進展してしまっていることも確かです。 こうして、全てがこの先どうなるかわからない時、一体どうしたらいいのでしょうか。

わたしたちは(特に日本人は、と言ってもいいでしょう)「既成事実」なるものに限りなく弱い集団です。 そして、また「大勢がそっちの方に流れているなら、もうどうしようもない、それに身を任せるしかない」といつも言ってきました。 それが生き延びる唯一の方法のように思い込んでしまって。*3

しかし「事実」とは何でしょう? そして「大勢」とは? 確実なことは言えませんが、確かなことはないということだけは確かです。 「事実」も「大勢」も、絶対動かないものではないということです。 それらは、ここに至るまでの流れを含んでいる様々なコトをどう理解するか。そして、これから何を望むか。 それらによって、初めてコトが分かり、事実はまとまった意味のあるものとして現れます。 そして、そこから、今この場に自分がどう臨むかによっても状況は動いて行くはずです。

つまり、コトはいくらでも(再)構成されるということです。なぜなら関係の中で集団の中で生きる人は、 意味のある世界(つまり物語り)なしでは、生きられないからです。 そして確かに、わたしたちは過去から今に連なる特定の物語りを生きています。

しかし、ここで問うべきは、わたしたちは他者を避けてばかりの生き方をしようとしていないか、ということです。 そもそもわたしたちは、自分とは異質な他者の存在を認めず「これが当然で、これしかない」と思わせる小さな世界の中に 閉じ込められてはいなかったかということです。今回のパンデミックは、そうしたことを実に見事にあらわにしてくれました。

こうした様々な「問い」を、わたしたちは適当に流さないで、しっかりと問い続けてみたいと思います。 実は、それこそは「近・現代なるもの」の病いへの対処・対応法として始まったと言える「臨床心理(学)」をも、 その根底から見直すことにつながります。

臨床心理学はつい最近まで、科学を自称していましたが、実は最初から矛盾だらけでツギハギだらけのものです。 考えてみれば、生物の世界と結構似ているのではないでしょうか。それだからこそ、と言いましょう。この臨床心理(学)の世界は、 次の世代(あるいは時代)への希望になるかもしれないと思うのです。ただし、問いを続ける限りです。 そして、今の特別の事態は、臨床心理(学)の営みを、その枠から土台から、根底から問い直し、 考え直すことができる絶好の機会ではないかと思うのです。

そこで、今回の大会には、これまでの常識に囚われないやり方を提案します。 わたしたち日臨心(日本臨床心理学会)は、学術団体ではありますが、当事者から学ぶことを掲げ、 臨床心理の専門家だけの団体にしないようにしてきました。これからは、その考えをさらに大胆に進め、 臨床心理の世界を最大限に広げたいと思います。この大会はその大きな第一歩です。

昨年の大会は横須賀で予定されていましたが、パンデミックで中止となりました。 今回のプログラムでは、その時に用意されていたものをやり抜きたいと思っていましたし、 今回の中に含めたいと考えていました。しかし、この特別な機会を大いに生かすために、考えを大きく変えました。

期間を1週間として、リアルで集まることを前提としたプログラムとは 全く別のやり方で行うことにします。 日臨心という組織そのものにとっても、 新しい実験的取り組みです。 それは、OST(オープン・スペース・テクノロジー) の考え方を取り入れた <誰でも望めば、問題提起者になれ、主催者・主人公になれる>という発想で、全てを企てるというものです。*4

それによって、閉ざされているそれぞれの専門の分野(世界)を開き、専門家の枠を取り払って、 これまでにはなかった交流を始めたいと思います。「越境する対話」を目指すということです。 既成の枠を超え、多様性を生かして、問題と課題を様々な角度から見直したいという ことです。 そうして、人と人との、人と集団との関係、人と組織との、集団と組織との関係について、これまでとは大きく違うあり方を、 発生・発現させることができる「場」と「間」を用意したいと思います。

そこで交差・交流を通して、自然搾取の人間/個人中心主義や商品の生産/消費中心主義とは別のあり方が見えて来ることを、 そして模索・試行を通して、新しい動き・新しい生き方が、この危機の中で少しでも立ち現われんことを、切に願っています。

以下は本文の字句の注釈や解説でもありますが、この草稿を書いている中で、 これを読んだ 大会準備委員からのコメントなどを生かして、付け加えたものです。

  • *1)と言うよりも「大戦ではなくも、世界各地での局地戦は絶えず、そこに加わる大国の介 入で実に悲惨な状態が続いていることはよく知られていますし、科学技術への信頼についても、 無批判の傾倒・讃美と言うべきで、その副作用への考察・対処の怠慢こそを考える必要がある」と語るべきかもしれません。

  • *2)グローバル化は、とりわけ新自由主義経済のグローバル化と明言した方がコトがはっきりと するかもしれません。

  • *3)既成事実を突きつけられ、その場の空気によって支配されて、動きが全く取れなくなる ということは、昔も今も変わっていません。この案内文の草稿を書いていた時が、 パンデミックの真っ最中の東京オリンピック2020の開催に関して、 批判的な意見がメディアでも取り上げられつつあった時でした。このことに関して、 一貫して五輪の東京開催に反対していた久米宏が発していた言葉があります。 誰もそんなことになると思っていなかった太平洋戦争開戦に至る時と同じなのだと。
  • ――それと「今さら反対してもしようがない」ね。その世論が先の大戦を引き起こしたことを皆、忘れているんですよ。 「もう反対するには遅すぎる」という考え方は非常に危険です。日本人のその発想が、どれだけ道を誤らせてきたか。
  • 日刊ゲンダイ7.31 公開のインタビュー記事 久米宏氏『日本人は“1億総オリンピック病”に蝕まれている』
    http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210304

  • *4)オープン・スペース・テクノロジー(OST)の考え方は、日臨心の基本的な発想に重なっており、 その理解と応用は、日臨心の新しい展開に繋がると様々な試みがなされて来ています。すでに第55回大会でも、 一部その精神に基づいて運営されましたし、さらにもっと前、2011年大阪市立大学での大会の頃から、 ワークショップなども開かれています。

OSTについては、大会の前に、全体に(あるいは関心のある会員には個別に必要な)情報を提供して行くつもりです。

滝野功久(いさく) 大会実行委員会代表

日本臨床心理学会第 55 回東大阪大会のお知らせ

対話と反想、オーブンダイアローグとリフレクティングは、 社会的排除と差別に対してなにができるか?

大会準備委員長 滝野 功久

日時 2019年8月31日(土)~ 9月1日(日)
場所 近畿大学(東大阪キャンパス) 東大阪市小若江 3-4-1
お問合せ
日本臨床心理学会事務局
〒603-8148 京都市北区小山西花池町 1-8(株)土倉事務所内
Email:jde07707@nifty.com
Tel:075-451-4844 Fax:075-441-0436 郵便振替:00190-8-59797
日本臨床心理学会 公式サイト http://nichirinshin.info/

今回は、昨年の大会が台風で未消化な形で終わったことを、改めてやり抜くものです。もちろん同じことをするのではなくヴァージョン・アップをして、やり方も内容も、色々工夫したいと考えています。

前回以上に全体をグループで行うワークショップ方式にします。そこでできるグループは、集まって来る人々によってまた大きく変わって来ますので、たとえ類似のプログラムでも、相当にちがった展開になると思います。

そして、大会の直前には、反想法(リフレクティング)の実際を具体的に体験できる簡単な研修を大会とは別途に用意したいと考えています。これについては、予定が決まり次第、改めてネットを含めてお知らせいたします。

この大会のカギとなる「オープンダイアローグ」と「リフレクティング」は、ご存知の方も多いと思いますが、北欧の精神科医療保健活動や家族療法の実践の中から生まれてきたもので、大変厄介と考えられていた精神障害の危機的状況に対しても、薬物や拘束と介入をほとんど使わずに、大きな成果を確実に出していることで、数年前から世界的にも注目されてきているものです。

しかし、オープンダイアローグと、特に「反想」=リフレクティングは、それが生まれて来た領域・分野にとどまることなく、対人援助全般はもちろん、組織刷新・地域活性化・紛争解決、そして持続可能な社会のための市民運動など、実に広範な領域においても活かせるものです。さまざまな問題・課題に対して、現場の課題に合わせて、工夫しながら色々と応用して使うことが可能ということです。

ただし、それらを対象操作のための手法としてだけ捉えてしまうと、最初はうまく行ってもすぐに有効でなくなり、見向きされなくなって行くに違いありません。このことを実はかなり心配しています。反想=リフレクティングは、確かに手法的側面があり、何度も実地で訓練して、身につけて行くものです。しかし、同時にその土台には、課題に対しての《人と人との対等性》や、《環境と文化の多様性を尊重する》思想、近代の搾取と競争を超える《脱人間中心のエコロジー的発想》などがしっかりとあります。それらを深く理解しないでは、これまで外から導入された多くの新しいものと同じく、表面的な形だけのものになってしまいます。それでは、現場のなかでの応用はもちろん、社会に変化をもたらすような展開は難しいと思います。それでなくとも既存の体制からの無視・黙殺あるいはすり替えといった大きな抵抗は、しつこく続くにちがいありませんから。

これまですでに何度も言いましたが、オープンダイアローグによる対話や反想法=リフレクティングは、私たちが当然として来た専門家のあり方や臨床心理(学)の通念をはるかに越えて、セラピーや個と集団のパラダイムをひっくり返す力を秘めています。問題は個の内部の病巣から現れていて、それに対して早期に有効な治療を施すと言った従来の医学的モデルでコトを視ないのはもちろんですが、問題の正確なアセスメントと有効な対処法の立案とその効果的な実現こそを(あるいは、だけを)専門家の仕事ととらえることにも、疑問符を付け加えます。と言っても、そういう役割の専門性は不必要と言うことではありませんが。

問題を個人と責任とにすぐに結び付けないで、問題そのものとして外に出してみること、個々人の歩んできた道のりを常に大切にとらえながら、人と人ばかりではなく、人と自然や、人とものの関係のなかで、今ある事態を考え、与えられた枠組みとは別のものからみれば、どのような物語が可能なのか、そうしたことに関心を抱きます。その意味で、エヴィデンス・ベイスドの発想とは別のナラティヴ・アプローチの実践でもあります。

このアプローチは、出現すること(たとえば症状)の数値化に努力するよりも、周りとの対話と交流を通じて、もっと違った見方や発想をいくつも呼び込んだり汲み取ったりすることに、そして体験を味わうプロセスに、一層の関心を注ぎます。場面や言葉をかえてみることで何が違って来るか試してみることも積極的にやります。ミスやエラーがあっても小さな逸脱があっても構わないとして、ちょっとしたことでもよしとして新しいことを次々に試みようとするものです。するとタイミングが合えば、一挙に新しい窓が開くことがあります。そうでなくとも、最初はわずかでも、継続するなかで着実な変化を生み出して行きます。

大会自身がそうした機会として活きることを願っています。これを読み、大会に参加しようとしている方にとって、ここに参加すること自体が、ほんの少しでも何かの新しい出発点として感じ取られるようなものにする、それを一緒にできればと思っています。

日臨心では、2年前の茨城大会では斎藤環さんを招いて、オープンダイアローグをテーマにしたワークショップ・全体会をしました。私自身も、オープンダイアローグで使われている反想法=リフレクティングなどを活かしたワークショップを京都と東京を中心に続けてきています。これまでの展開をみますと、それなりの成果を得てきていますが、現実にその実践の広がりと深まりにおいては、心配なことも結構あります。上に書いたことだけでなく、その発想や手法が、シンプルであるために、すぐに分かったつもりにさせてしまうことが結構多いということもその一つにあります。

そうしたことも踏まえて、今回の東大阪でのワークショップを中心にした学術大会は、初めての人にも、既にかなりの体験をしている人にも、大きく意味ある、今後を楽しみにできるものにしたいと強く願っています。そのために不可欠なことは、参加・反想・共有です。

このほかにも「ヒアリング・ヴァイシーズの現在と課題」「当事者研究」「ポスター発表」を準備しています。下に、前回大会に沿った仮のプログラムを載せますが、これはたたき台で、これからいろいろ変更・修整して行くものです。普通だと、今の時点でこんな状態で大丈夫かと言われそうですが、OKです。オープンダイアローグとオープン・スペース・テクノロジー(OST)*の精神でやって行きますので、あらかじめキッチリと決め過ぎないこと、これこそが-番大切なのです。

皆さんからの提案などと対話をしながら準備して行きたいと考えています。もちろん、全く新しい提案となると、時間・予算・物理的空間などの制約や条件もありますので、簡単には実現できないことも多いでしょうが、しかし、そうしたものがあったことは取り上げられます。どうぞ、遠慮なく提言や問い合わせをしてください。前回大会のコメントなども歓迎します。

【大会準備委員】

学会役員+山本智子(近畿大学)

岩谷美佐、梅下節瑠、桂田俊武、風かおる、桑田淳一、塩沢宗徳、鈴木秀一、田代 順、竹之下雅代、韮沢 明、羽下大信、平野美紀、藤井佳世子、三井裕子、六波羅佐奈枝、渡辺盤生、滝野功久(代表)

日本臨床心理学会 第 54 回大阪大会のご案内

大会テーマ:対話と反想、オープンダイアローグとリフレクティングは、社会的排除と差別に対してなにができるか?

ぜひ読んでいただきたい「開催に当たっての想いとアピール」

オープンダイアローグや反想法(リフレクティング)は、北欧の精神科医療保健や家族療法の中から生まれてきたものですが、それらの領域にとどまらず、対人援助全般、組織刷新・地域活性化・市民運動・紛争解決などにも活かせるものです。それは、専門家のあり方や臨床心理(学)の通念をはるかに越えて、グループワークのパラダイムをひっくり返す力を持っています。

今回の大会は、それらを少しでも感じ取ってもらうためのものです。通常の学術研究発表とは相当に違ったものになり、キレイにまとめることはしませんので、困惑も感じられるかもしれません。しかし、一人ひとりが参加してよかったと思えるような集まりにすべく、与えられた条件と限界の中で、最大の努力と工夫をします。メインテーマの《対話》と《反想》で大切にされるように、ここでも、その場ですぐに得られる「結果」よりも、むしろその後も続けられるであろう「プロセス」をもっとも重視したいと考えています。

そのために、途中で以下に載せるプログラムも変更になるかもしれないこと、当日でも最適化するために、変更や修正もあることを予めお伝えしておきたいと思います。

今回の大会の集まりでは、学会が新しく再出発するために新しい会則の提案もあります。 日臨心の新しい展開のスタート点になることを願っています。参加する一人ひとりの方がこの 大会を通して様々な方と意味ある出会いをされることを願っています。そして、どのように学びのネットワークを広められるか、どのように集団と個人の学びを深められるか、こうしたことを一番大事にしたいと考えています。それは、参加者の謙虚さを伴った好奇心と探究心、そして 自由と試みの精神がその場で、否、それ以前から、それ以降に、どのように発揮されるか、これにかかっています。皆さんと一緒に、楽しいものにできたらと思っています。

大会プログラム

9月29日(土)
12時 受付開始
12時30分 A~Cプログラム
2時~6時 Dプログラム
6時~7時30分 懇親会
9月30日(土)
8時45分 受付開始
9時~10時30分 定期総会
10時30分~12時 Eプログラム
1時~5時 F~Hプログラム

その他の話題提供を募集中

話題提供に関しての問い合わせは、至急、大会事務局 kyotoiszs@gmail.com へどうぞ

その他の問い合わせ

日本臨床心理学会事務局
〒603-8148 京都市北区小山西花池町1-8(株)土倉事務所内
Email:jde07707@nifty.com
TEL:075-451-4844 FAX:075-441-0436
日時 9月29日(土) 30日(日)
場所 大阪人間科学大学 庄屋学者 A棟(大阪府摂津市庄屋 1-12-13)
参加費
  • 会員:2,500 円
  • 非会員:3,000 円
  • 学生/当事者:1,500 円
  • 懇親会:4,000 円
交通案内
  • 新大阪駅から、JR京都線「岸辺駅」(約10分)下車 徒歩10 分
  • 阪急京都線「正雀駅」下車 徒歩 5 分